第68章 出会いと別れ
「先…生…ハンジさん…もう…私無理です…痛い…あぁ…いやぁぁぁぁぁぁ!!!いやぁぁぁぁ!!!」
「クレア……?!」
涙を流しながら…握られたハンジの手に爪を食いこませながら…クレアは痛みを訴え叫んだ。
しかし次の瞬間、医務室は不気味な程に静まり返る。
今のが最後の叫びだった様だ。
「や、やだぁ…クレア!クレア?!」
暴れていた身体が、強く握り返された手の力が、一気に脱力すると、クレアはそのまま意識を失ってしまった。
暴れてベッドが軋む音も、悲痛な叫び声もピタリと止まる。
「クレア君?!しっかりしなさい!!」
医師が慌てて頬を叩くがもうピクリとも動かない。
直ぐに呼吸と心音と確認すると、息も心臓も正常だった。
次に出血具合を確かめるために毛布をめくると、出血はほぼ止まっていたが、“あるモノ”が医師の目に止まりハンジの名を呼んだ。
「ハンジ分隊長…」
「先生!?クレアは?いったいどうしちゃったの?大丈夫なんですか?!」
「クレア君の命は、きっと、問題ないでしょう…しかし…」
銀色のトレーにピンセットを手にした医師は、クレアの脚の間にある血の塊を掴むと、トレーにのせてハンジに見せた。
「…こ、これって、まさか……」
「はい…おそらく、クレア君は自然流産だったのではないかと思われます。これは、胎嚢でしょう。リヴァイ兵長が戻られたら専門医に診断してもらいましょう。」
「そ、そんな……」
胎嚢が出てきたのなら大出血の危険のある子宮外妊娠の可能性はなくなる。
だがハンジは、目の前で大量の出血をし、青い顔をしながら気を失ってるクレアに対して、とても“よかった”なんて感情はわかなかった。