第68章 出会いと別れ
「あ゛ぁ…い、痛い…イタ…イ…」
今まで経験した事もない強烈な痛みに、クレアは首を左右に振り、シーツを思い切り握りながらなんとか耐えようとするが、どうにもこうにも痛みを誤魔化す事ができない。
段々とうめき声も悲鳴の様な叫び声に変わっていく。
「いやぁ…!痛い…!もう…」
自分の最後は巨人に食われて死ぬものだと思っていた。
このまま痛みと出血で死ぬのだろうか。
「あぁ!!いやぁ!!痛い…痛い…イタ…イ…」
「クレア?!クレア!!しっかりして…!ねぇ!先生!あともうできる事はないの?!」
苦しむクレアにどうしてやる事もできずに手を握るが、その手さえふり払われてしまう。
先程まではジッと歯を食いしばって我慢をしていたが、痛みのレベルがそれを超えたのだろう。
クレアは痛みに耐えかね、ベッドの上で七転八倒するかの様に身体を左右に振りながらなんとか意識を保とうとしていた。
「歯がゆいが、止血剤を投与したならば、あとは身体を冷やさないようにしてやる事くらいしかできません…」
医師は棚から薄手の毛布を持ってくると、ハンジに手渡した。
「そ、そんな…」
クレアには入団してから何度も助けられた。
壁外調査で無茶をした時も、風の様に素早く飛んできて助けてくれた。
どんなにしんどい状況でも弱音を吐かずに小さな身体で数え切れない程の巨人を討伐してくれた。
そんなクレアが目の前で苦しんでいるというのに、自分はただ毛布をかけてやる事しかできない。
クレアの上官なのにこんな事しかしてやれないなんて…
ハンジは情けない自分を恨み奥歯を噛んだ。