第68章 出会いと別れ
「嘘…でしょ…?!私が…妊…娠…?!」
腹痛と吐き気で医務室にきたのに、まったく思ってもみなかった診断にクレアの頭の中はパニック状態だ。
リヴァイと肉体関係があったのは事実だ。
だが、お互い多忙の身。
そう頻回に逢瀬を重ねる事などできなかったはず。
それなのに何故。
「クレア君…性交渉があれば、誰にでも妊娠の可能性があるんだ。とにかく今はこの出血を止めないと、君の命が危ない。ほら、早く腕を出して…」
クレアは頭の整理がつかないまま力無く腕を医師に差し出した。
チクリと針の刺さる感覚が胸にまで響く。
「……うぅ…う……」
医師の言う事はもっともだ。
100%の避妊方法などないのだ。
だがどうして今なのだ。
こんな大事な時に……
リヴァイは、ハンジはどう思ってるだろうか。
ウォール・マリア奪還作戦を目前に何をしてるんだと怒るだろうか。
込み上げてくるのははかり知れない程の膨大な不安な気持ちだ。
愛しい恋人との間に芽生えた命だというのに、今のクレアにはそれを喜ぶ事ができなかった。
クレアの中には、痛みと…恐怖と…不安だけしかない。
「これでよし…あとはリヴァイ兵長が戻って来るのを待つだけだ。クレア君、汗をたくさんかいてるから少し水を飲みなさい。」
「は、はい……」
涙混じりの様な声で返事をすると、医師はグラスに入った水をクレアに差し出したのだが…
「あうぅ……!!」
グラスを受け取ると、腹部に痛みが走る。
「クレア!?」
「い…痛いぃ…!!」
スルリと落ちたグラスが床に落ちて割れると、身体が裂けてしまいそうな程の激しい痛みがクレアを襲った。