第68章 出会いと別れ
「クレア君、苦しい所すまない…点滴を打つから腕を出してくれるかな?」
「…点…滴…ですか?」
薄っすらと目をあけると、ベッドサイドに置かれたトレーには点滴バッグと薬瓶、そして注射器が用意されている。
よくよく見てみると、その薬瓶はクレアにも見覚えのある“止血剤”だった。
なぜ、止血剤が…
自分は嘔吐と腹痛で医務室まで来たのだ。止血剤などいったい何に使うのだ。
疑問に思ったクレアは消え入るようなか細い声で医師に問いかける。
「先生…?何故…止血剤を…?私は…いったい…どうしちゃった…んですか?」
クレアは先程医師がリヴァイ達にしていた話を聞いていなかった。
そのため、今自身の身体で起こっている事がわからない。
医師はどう答えようかと戸惑ってしまったが、ハンジから“話してやってくれ”とアイコンタクトを送られると、その重い口を開いた。
「とても言いにくいんだがね、君は妊娠している可能性が高い。そして今、流産を起こしかけている。リヴァイ兵長が産科の専門医の所へ行って往診を頼みに行ってくれているんだ。出血もひどいし、兵長が戻ってくるまで止血剤を使うよ?」
「え…そ、そんな…私…妊娠なんて…今朝、生理もきたのに…どうして…?」
「さっき君は3週間遅れてきたと言っていたね?きっとそれは、生理不順ではなくておそらく妊娠をしていたんだと思うよ。この出血は明らかにおかしいからね…」
「……え…?!なに…これ…」
出血と聞いて自身の下半身を見ると真っ赤に染まったスボン。
激しい腹痛に、全身びっしょりと汗をかいていたため、あふれ出す出血に気づいていなかった様だ。