第68章 出会いと別れ
「や、やだクレア…ちょっと!しっかりして!!」
「ハ、ハンジさん…」
膝を地面についてるのは理解できたが、なんとも言えない不快な感覚が全身をめぐってクレアの平衡感覚を狂わせた。
右が左で左が右で、上と下がひっくり返ってるような感じだ。
「ゔぅ…ゔぇ……エェ……」
それと同時に込み上げてきた嘔吐感。
無理して食べたせいか、まったく消化されていない朝食をその場で吐き出してしまった。
「ご、ごめんな……さい…」
「クレア!?すぐに医務室へ行こう!!モブリットお願い!!」
「は、はい!!」
ハンジがモブリットにクレアを抱き上げるように命じるが、今度はうめき声を漏らしながら額を地面につけてうずくまってしまった。
「ど、どうしたの…!?」
「お…お腹が…痛…い……」
体調不良に嘔吐に、突然の腹痛。
あまりにも激しい痛みに意識を飛ばしそうになったが、そんな中でも必死に考える。
昨日は1日兵舎にいた。
酒はもちろん飲んではいないし、口にしたのも食堂で出された食べ物だけだ。
嘔吐に腹痛…すぐに想像できるのは食中毒の類だが、それならクレア以外の複数の人間にも症状が出てなければおかしい。
懸命に考えたが、それらしい原因は今のクレアには分からなかった。
「クレア、とにかく早く医務室へ…」
うずくまるクレアにモブリットが声をかけると、ちょうど時間差で休憩になったリヴァイ班が水道までやってきた。
「あれ…兵長、なんかハンジさん…騒いでません?」
「あ…?」
「モブリットさんまで…いったいどうしたのでしょうか?」