第68章 出会いと別れ
森から出ると、ギラギラとした太陽の陽射しが容赦なくクレアの身体を照りつける。
兵服に立体機動を装着した身では暑いを通り越してもはや灼熱地獄だ。
重怠い身体を引きずってやっとこさ水道にたどり着いたのだが、奇妙な感覚がクレアを襲った。
暑いはずなのに、汗をかいてるはずなのに、あまり水が飲みたいとは思わない。
「少しくらい飲まないと…」
声に出して自身に言い聞かせるが、水道の蛇口に手を置いたまま身体が動かなかった。
このままでは休憩が終わってしまう。
早くしなければ…
「おーい!!クレアー!!」
そんな事を考えていたら、遠くで誰かが自分の名前を呼んだような気がした。
「ねぇ!!クレアってば!!」
いったい誰だろうと思っていたら、いきなりハンジが目の前に現れて、自分の両肩を大きく揺すっていた。
「ハ、ハンジさん…?!」
「もう!何度も呼んだのに!!聞こえてなかったの?!」
「え……?」
ハンジの顔を見ると、遠くから呼ばれていたのではなく、ずっと近くで呼ばれていた様だ。
「ご、ごめんなさい…」
「ねぇ、クレア…やっぱりおかしいよ。今日はもう訓練休んで…!」
「…………」
たかが生理だ。
ウォール・マリア奪還作戦を目前に控えているのに、そんな理由で休みたくはなかったが、ここまでくるとさすがのクレアもおかしいと思ったのだろう。
ハンジの言葉に黙って頷いて、兵舎に戻ろうとしたのだが、水道の蛇口から手を離して身体を起こした瞬間、突然視界がグニャリと歪んだ。
「うっ…!」
クレアは足元をフラつかせながら地面に膝をついてしまった。