第67章 約束
どんな想いで自分を誘ったのかは分からないが、モブリットと会える約束ができるのであれば、どんな約束でも構わない。
「秋に咲く向日葵があるなんて知らなかった…見てみたいわ…」
「それじゃあ…」
「うん…私をそこまで…連れて行って欲しい…」
タリアは今日1番の笑顔で答えて見せた。
「良かった!!ありがとう!!タリア…俺、絶対に君と秋の向日葵を見に行きたい…」
モブリットはタリアの返事にホッとすると、思い切り抱きしめてそう言った。
「…私もよ……」
ほんの数秒間、熱い抱擁を交わすと、モブリットは柔らかい笑顔で手を振りながら店を後にした。
タリアはいつもの様に、笑顔を崩さずその背中が見えなくなるまで手を振って見送る。
そして、その背中が見えなくなると、タリアの目からは滝の様に涙が溢れた。
「うっ…うぅ……モブリット……モブリット…」
泣くつもりなんてなかったのに、姿が見えなくなったら急に涙が溢れてきてしまった。
もう自身の気持ちにけじめはつけたのだ。
後は、モブリットの言葉を信じて待つ事しかできない。
タリアは目を擦って涙を引っ込めると、すぐに仕事に戻ろうとしたのだが、振り返るとそこには怪訝な顔でタリアを見つめる店主が腕を組んで立っていた。。
「マ、ママ…?!やだ…今の話…聞いてたの?」
「いや…今ここにきた所だ。タリア、なんで泣いてるんだ?」
「え?!」
「あの兵士にプロポーズされたんじゃないのか?」
「な、な、何言ってるの?そんなわけないじゃない。いきなりどうしたの?」