第67章 約束
「君を…連れて行きたい所があるんだ。」
「………?!」
「秋に満開になる向日葵畑を知っているんだ。だからもし、俺が1ヶ月後のウォール・マリア奪還戦で生きて帰ってくる事ができたら…すぐに君に会いに行く。だから…その時に一緒に向日葵の花を見に行かないか?」
今、気持ちを伝える事はできない。
ウォール・マリアを生きて奪還できたとしても、エレンの地下室で眠ってる秘密がこの世界を揺るがすモノであるのならば、自分も調査兵団もさらなる試練に立ち向かわなければならない。
だが、ウォール・マリアを奪還できれば確実に人々の生活は変わる。
ヒストリアが女王となり、腐りきった体制がクリアになって暮らしが変わったように、ウォール・マリアという物理的な領土を奪還できれば…
作物も家畜も育つ。
また別の視点からも生活はぐっと良くなるだろう。
試練の日々はこれからも続くかもしれない。
でも…もしウォール・マリア奪還作戦を生きて帰還する事ができたなら、この想い…タリアに伝えたい。
モブリットはウォール・マリアを奪還するという、兵士としての務めを果たしてから想いを伝えると考えた様だ。
「モブリット……」
タリアにはモブリットの心の内は分からなかったが、自分が好きだと言った花を覚えていてくれた。
秋に咲く向日葵があるなんて知らなかった。
1ヶ月後のウォール・マリア奪還作戦が終わる頃はもう季節は秋になっている。
普通に考えれば向日葵なんてどこにも咲いていない。
モブリットは自分のために…いや、こんな使い古された年増の娼婦のために…秋に咲く向日葵を探してくれたのだろか。