第67章 約束
巨人によって壊されてしまったシガンシナ区を修復するには、巨人の領域に足を踏み入れるだけではない。
壁門に穴を空けた巨人が、修復を阻止しに来るかもしれないのだ。
一般庶民に、超大型巨人と鎧の巨人の正体は公開されていないが、異質な巨人によりシガンシナ区が破壊されたという事は周知の事実。
タリアがその身を案じるのは当然の事だ。
考えたくない。
考えたくなどない。
だがモブリットは調査兵団の兵士。
次また会える保証など、どこにもありはしないのだ。
悲しいがこれが、兵士を好きになった女の運命なのだろうか。
こんな運命簡単に受け入れる事などできない。
目にうっすらと涙が浮かぶと、タリアは口を小さく動かした。
「いいわよモブリット…出して…でも、このまま果ててちょうだい…?」
「……え?!」
耳を疑う様な台詞に驚いたモブリットは、動きを止めて両手をタリアの顔の横につく。
「だからこのままよ…さっきも言ったでしょ?モブリットの全てを私にちょうだい…って、だから…このままよ…」
「タリア…?」
目と目が合うと、タリアの目からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
「だって…次…会えるのか…わからないのでしょう…?」
「それは…」
次会えるのか?
この質問には、今明確に答える事ができない。
残酷だが、これはどう足掻いても曲げられぬ事実だ。
でも何故タリアは涙を流しているのだ。
自分を客として懇意にしてもらっている自覚はあったが、それだけの関係で涙など出るのだろうか。
モブリットには疑問だった。