第67章 約束
「モブリットがそんな風に思ってくれて…私、嬉しい…本当に、嬉しいの…」
「タリア…」
モブリットは思う。
タリアが自分に嘘をついているとは思っていない。
だが、こんなにも自分の無事を喜び会いたかったと目元を赤くしながら言われてしまえばよからぬ期待をしてしまう。
この言葉は客に対する世辞なのか、それとも自分だけに向けられた言葉なのか。
モブリットはすぐにそれを確認する勇気がでなかった。
「ごめんなさい…せっかく忙しい合間を縫って会いに来てくれたのに、私がこんな湿っぽくしてはダメよね。ホラ、早くこっちにきて…ねぇ、早く…」
「タ、タリア…?ちょっ、ちょっと…」
目元を軽くこすって溜まっていた涙を散らし、タリアは戸惑うモブリットの手を握ってベッドまで引っ張ると、そのまま倒れ込むように押し倒した。
ードサッ!!ー
仰向けに倒れたモブリットに、ピンヒールのサンダルを履いたまま、タリアはすかさず跨がる。
腰のあたりまでスリットの入った大胆なドレスから惜しみなく披露された太腿は、なまめかしく男の欲望を誘惑し、誘い込む。
「ねぇ…今日は、先にシャワーを浴びる?それとも…このまま…したい?」
緩く毛先を巻いたセミロングの髪をかき上げながら、タリアはしっとりと視線を流し、モブリットに問いかける。
ここは娼館。
湿っぽい話を延々とする場所ではない。
モブリットの心の中が気にならないわけではなかったが、久しぶりに来てくれたのだ。
まずは心ゆくまで満足してもらおうと、タリアは気持ちを切り替えた。
「タリア……」
もう少しお互いの近況など話をしようと思っていたモブリットだったが、女の色香を纏った目つきに変わったタリアを見てしまえば、そんな考えなどどこかへ吹き飛んでしまう。
下半身がドクンと脈打つと、モブリットはタリアの目を真っ直ぐ見つめてその質問に答えた。