第67章 約束
でも、そんな風にモダモダしていたら巨人化するエレンが現れ、あれよあれよという間にクーデター騒ぎになり、タリアに会いに行く事などできなくなってしまった。
ベッドに転がり休日を謳歌するなど、いったいいつぶりだろうか。
それ程までにここ最近の忙しさは尋常ではなかった。
「…………」
だが戴冠式も無事に終わり、調査兵団へ編入を希望してくれた兵士もある程度入団してくれた。
ハンジが自分を呼びつけないのであれば、休日は自身のために使い、あとは訓練に励み来るべき日を待つだけだろう。
少し自分に都合の良すぎる解釈ではないのかと突っ込みたくもなったが、きっとハンジの言っていた事を素直に受け止めるなら今日はタリアに会いに行くべきではないのか。
「タリア……」
マリア奪還作戦が近くなり、会いにくくなってしまったら今度はいつ会いに行けるかわからない。
窓の外を見れば日は傾き、空の色は夜へと変わろうとしている。
モブリットは熱くなる胸に手を当てると、タリアに会いに行こうと静かに心に決めたようだ。
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夜の帳が下りると、モブリットは食堂で早めの夕食を済ませて、誰にも見つからないようにそそくさと兵舎から出ていった。
休日の過ごし方は自由だ。
特に兵士の娼館通いも禁止されていない。
中には堂々と娼館通いを宣言してしている奴もいるくらいだ。
だが、今までただひたすらにストイックにハンジに尽くしていたモブリットにとってはやや後ろめたく感じ、堂々と通う事はできなかった。
コソコソと兵舎を後にすると、人気の少ない道を選んでタリアのいる“仕立て屋”へと向かう。
最後に会ったのはまだ雪の降る寒い夜だった。
季節はすっかり変わり、もう汗ばむ季節。
タリアは元気にしているだろうか…
あいかわらず客引きの仕事をしているだろうか…
それとも…
自分以外にタリアを気に入る男が現れてしまってるだろうか…