第67章 約束
ウォール・マリア奪還戦が1ヶ月後に行われると正式な発表がでた。
それにあたり、調査兵団は、ウォール・マリア奪還にむけて編入を希望する兵士がいないか勧誘活動に出た。
流石に今いる人数だけでは不可能だ。
最初は皆勧誘活動に乗り気ではなかったが、クーデター事件の一件で調査兵団のイメージが変わったのか、若い兵士を中心に思っていた以上の人数が集まった。
そのため、この所は彼らを中心にした訓練メニューが組まれ、日々奮闘していた。
そんなある日の休日。
モブリットはベッドにゴロリと寝転がり天井を見つめていた。
今までなら休日も関係なくハンジと仕事だった。
仕事がなくても、本が欲しいと言えば荷物持ちにかり出され、書類仕事の締切が間に合わないと騒ぎ出せば執務室にこもり、手伝いをしていた。
だが、あの日を境にハンジは休日のモブリットに声をかける事はなくなった。
そう、深夜にハンジの部屋を訪れた、あの日から…
今だって、幹部はウォール・マリア奪還戦に向けて会議や書類仕事、さらには編入を希望する兵士の面談や適正診断など、仕事は山積みなはずだ。
それでもモブリットに泣きついてこないあたり、あの時ハンジがモブリットに言った言葉は本心だったのだと理解できる。
まだ凍てつく寒さの冬の夜、ハンジの部屋を訪れた時に言われた言葉。
「他にもちゃんと目を向けて、向き合え。そして悔いが残らない生き方をしろ…」
ハンジに話した事はなかったが、きっとタリアの事を言っていたのだろうと思ったモブリットはその時初めてタリアへの気持ちを自覚した。
タリアの事が好きだと自覚してずいぶんたつ。
タリアに会いに行くチャンスが無かったわけではないが、クーデター事件で会いたくても会いに行けなかったのもまた事実。
だが、自覚してしまった想いは大きな愛しさとなってモブリットの胸をしめつけ、なかなか奥手にさせてしまっていたのもまた、事実だった。