第65章 女王、ヒストリア・レイスの即位
「お待たせ、もう帰れるからね。」
馬房でおとなしく待っていたデイジーを労い額を撫でてやると、気持ち良さそうに目を瞑る。
そんな可愛い仕草に胸をキュンとさせていると、厩舎の外が騒がしい事に気づいたクレア。
「?兵長…誰か来ますね?」
まだこの厩舎には何頭もの馬がいる。
戴冠式の出席を終えた兵士がここに来るのはなんらおかしい事ではないのだが、なんだか騒がし過ぎる。
いったいどうしたのかと不思議に思ったクレアが外の様子を見に行こうとしたのだが、その喧騒の方からやってきてくれた。
「あぁぁ!!リヴァイ兵長に…クレアさん…」
それと同時に上がる叫び声。
「ヒストリアに…みんな…」
厩舎にやってきたのは、ヒストリアと104期の新兵達だった。
皆リヴァイの顔を見て黙っている。
あれだけ豪語していたヒストリアもなんだかタジタジだ。
「ヒストリアか?それにお前ら…いったいどうしたんだ…」
新兵達は飲み食いをしに行ったのだとばかり思っていたリヴァイは、この状況がよくわからなかった。
少し距離をとった所でヒソヒソと何か話している。
「待てよ…本当にやるのかヒストリア?」
「な、何よ…エレンだってやっちまえって言ってたじゃない!」
「ありゃーリーブス会長の遺言っていうか、最後の冗談だろ?」
「遺言ならなおさらやめられないよ…」
「別に恨んでねぇならやめとけよ…」
「こうでもしないと女王なんて務まらない!!」
「いいぞヒストリア!その調子だ!」
やめろと進言するエレンに、いいぞと挑発するジャン。
クレアには彼らの会話の意味がわかっていたが、リヴァイはわからない。
ヒストリアは本当に実行するのだろうか…
クレアは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。