第65章 女王、ヒストリア・レイスの即位
「そんな事ありません!私…あの時のクレアさん見て、とても感動したんです!!」
「え?!」
「壁外調査の朝に、髪を結い上げたクレアさんを見た時…その姿がとても凛々しくて、かっこよくて、胸を打たれたんです。私がクレアさんと同じ髪型にしたからといって、クレアさんの様に凛々しくなれるわけではないのですが、私はこれから女王としてやっていかなくてはなりません。今日はその門出の戴冠式です。私もあの時のクレアさんの凛々しい姿にあやかりたくて…だからお願いできませんか?」
あやかりたくて…
自分は人からそんな風に思ってもらえる人間ではない。クレアは思わずそんな言葉が口からでかかったが、見ればヒストリアの顔はとても真剣だ。
そんな顔で見つめられてしまえば断る理由などありはしない。
そっと頷くと、クレアはヒストリアの座っているイスの元まで行き、敬礼をした。
「こんな私で宜しければ喜んで!!」
「ありがとうございます!!」
明るい笑顔につられてクレアもニコリと笑うと、置いてあったクシを手に取りヒストリアの髪をとかし始めた。
「立派な王冠を頭に乗せるのよね…それじゃあ下の方でまとめた方がいいのかしら…」
クレアはヒストリアの髪の毛を真ん中で2つに分けると、髪の根本からキッチリと編みこんでいった。
「ねぇ、クレアさん…?」
「ん?!」
「クレアさんをここに呼んだ理由…実はもう1つあるんです。」
「え?そうなの?えっと…何かしら?」
クレアは編み込む手を止めずにヒストリアの話に耳を傾ける。
「私、戴冠式が終わったら、正式にこの壁の中の女王になります。なので、リヴァイ兵長の事、おもいっきり殴りたいんですけど、いいですか?!」
「えぇ?!いきなりどうしたのヒストリア?」
あまりにものトンデモ発言に、クレアは声を裏返して驚いた。