第65章 女王、ヒストリア・レイスの即位
ー2日後ー
ヒストリアが壁内の真の女王となる戴冠式が執り行われる事になった。
この短期間、あちこち身を隠すために潜伏をし、濡れ衣をかけられ逃げ回り、人同士の殺し合いをしてきたリヴァイ班、ハンジ班にとっては、疲労がピークだったが、この混乱をおさめるにはヒストリアが真の女王として即位しなければ、鎮まらないだろう。
そのため、事後処理でバタバタだったにも関わらず、戴冠式の日程がすぐに組まれたようだ。
ヒストリアが王冠を戴く舞台には朝から民衆でごった返していた。
号外もでて、またたく間にヒストリアの英雄伝が広まると、皆そんな女王の姿をひと目見ようと、早朝からわれ先にと場所取りで賑わっていた。
各兵団の兵士には、舞台から少し離れた場所に席が設けられていたため、クレアとリヴァイは、皆より少し先にこの席まで来ていた。
賑わう民衆の顔を眺めながら静かに肩を並べて座る。
所々で見やすい場所をめぐって小競り合いが起きているが、皆いい表情だ。
今までの不正が正され、然るべき人物に王冠が渡ればきっと時代は変わる。
真の女王ヒストリアがきっと変えてくれると信じているのだろう。
温かな風が心地よく吹く中、クレアとリヴァイは賑やかな人々の表情を見ながら他のメンバーがやって来るのを待った。
「そういえば…クレア、怪我はないのか?」
「え?私ですか?」
唐突な質問に思わず聞き返してしまったクレア。
しかしリヴァイとは、一昨日の朝、ロッド・レイスを討伐した後からまともに顔を合わせる事ができなかった。
そのため、無茶をしたクレアの身体を心配したのだろう。
よくよく考えればゆっくり肩を並べて座るのも本当に久しぶりだ。
「ご心配おかけしてすみません…火傷も怪我もしておりませんので…ですが…兵長の方は…その…話をする事はできたのですか?」