第65章 女王、ヒストリア・レイスの即位
「す、すみません…兵長には最初からバレてしまっていたんですね…」
「当たり前だ。クレアを他の誰かと間違えるわけないだろ。」
「兵長……」
「無事でよかった……」
そう呟いてきつく抱きしめていた腕を緩めると、先程とは打って変わって優しい目をしていたリヴァイ。
クレアの無事を確認できて安堵したのだろう。
両手でクレアの頬を包み込むとそっと顔を近づけた。
「あ……」
ロッド・レイスの討伐成功にこの壁の上も反対側も大忙しだろう。
しかし、自分で提案したとはいえ無茶な作戦だった事は十分に理解していたクレア。
無事の討伐に気が緩んでしまい、リヴァイにされるがまま上を向くと、目を閉じて、愛しい唇が触れるのを心待ちにしてしまった。
もう2人の距離は限りなくゼロだ。
「あーーーー!!こんな所にいたぁ!!!」
しかし、2人の甘い雰囲気になんの遠慮もなく水をさしてきた人物が1人。
リヴァイもクレアもパッと目を開き、声のした方を向くと指をさして頬を膨らませているハンジがいた。
「ハ、ハ、ハ、ハンジさん!!??」
「クソメガネが…空気読めよ…」
ハンジは壊れて飛び散った馬車の荷台の木片を蹴飛ばしながらズカズカとクレアに近づくと、リヴァイから引っ剥がして両肩を掴みブンブンと前後に振り出した。
「もう!!クレアのバカバカバーカ!!あんな無茶!勝手にして!もう!!って…あぁぁぁぁぁぁぁ!!痛っっっっってぇぇぇぇ!!」
この作戦はどうやらハンジにもバレていた様だ。
ハンジはクレアの無事に感極まりブンブンと揺すったが、自身の負傷した右肩に痛みが走り、断末魔の叫びを上げてしまった。
「ご、ごめんなさいハンジさん…まさかハンジさんにもバレていたとは…そ、それと、傷に障りますので…これ以上暴れないで下さい…もう、始末書でもなんでも書きますから…」