第65章 女王、ヒストリア・レイスの即位
騒ぎを聞きつけたエルヴィンがヒストリアを連れて行くと、ヒストリアを囲っていた野次馬達もバラバラと去って行きこの辺りは静かになった。
「よっと……」
ボロ布でその身を隠していたクレアは、周りをキョロキョロと見渡して誰もいない事を確認すると、どさくさに紛れて壁上の調査兵と合流しようと飛び上がろうとしたのたが、背後から良く知る低い声に名前を呼ばれた。
「おい…クレア……」
「……ひっ!!」
まさかのリヴァイの声にクレアはビクリと肩を震わせて青ざめる。
恐る恐る声のした方向を向けば、腕を組み、眉間に深いシワを寄せてこちらを睨んでいる人類最強の兵士長の姿。
もしかしなくても不機嫌である事には間違いない。
「あ、兵長…あ、あの…ですね…その…えーと…滑って転びました…」
「……………」
視線を左右に泳がせながらしどろもどろに見え透いた嘘をつくクレアにリヴァイは盛大なため息をついた。
近くまで寄れば、頭から被った水に砂埃がつき、全身泥だらけではないか。
「ヒストリアになりすましてロッド・レイスに飛び込んでいくなんて…無茶な独断行動にでやがって…」
「兵長…?あの…もしかして…バレてましたか?」
「あぁ、俺にはバレバレだ。他の野次馬はわからんがな…」
クレアの土壇場の作戦、リヴァイには何もかもバレていた様だ。
「も、申し訳ございません…!!ヒストリアの気持ちを聞いてしまったら私…どうしても何とかしてあげたくて…なので…どうかこれは誰にも言わないでいただけません……か……あっ…!!」
勝手な独断行動に叱責を覚悟したクレアだったかが、気付くとびしょ濡れの身体はすっぽりとリヴァイによって包まれていた。
「へ、兵…長…?!」
「別に誰にも言わねぇよ…ただ、あの熱風の中ロッド・レイスに飛び込んで行くお前を見た時に、心臓が止まるかと思ったんだ…」