第65章 女王、ヒストリア・レイスの即位
「よし……!!」
襲いかかる熱風の中、急所への攻撃に成功すると、ロッド・レイスの身体は再び爆発し、白い水蒸気であたり一面を曇らせた。
その白い蒸気に紛れて、ヒストリアが身を潜めている馬車の荷台めがけて落下をすると、クレアは受身を取りながら着地をして、派手に荷台を真っ二つに壊してやった。
「お、おい…兵士が降ってきたぞ!?」
「君があの巨人にとどめを刺したのか?!」
「この街は救われたんだな!?」
落下した衝撃で砂埃を上げているにも関わらず、駐屯兵や野次馬達が、ワラワラと壊れた馬車の荷台に集まってくる。
「オイ大丈夫か?」
「ケガしているのか?!」
「兵服が無いようだが…兵科は?」
「所属は?」
仰向けになって倒れているのはヒストリア。
クレアが落ちてきて舞い上がった砂埃を利用して、2人は入れ替わったのだ。
「…………」
ヒストリアは右腕で顔を隠しながら、クレアの作戦が成功したのだとボンヤリと考える。
それと同時に、父はもうこの世にいない事も理解する。
クレアは、ちゃんと父に自分の伝言を伝えてくれただろう。
それならば、今度は…
これからは…胸を張って生きなければ…
自分の1番の理解者だったユミルの言葉を今一度思い出すと、ヒストリアはゆっくりと起き上がった。
自分の選択を信じて生きていく
その想いを胸にヒストリアは立ち上がると、自身の周りを囲っていた野次馬達の前で堂々と宣言をした。
「…私は、ヒストリア・レイス。この壁の真の女王です!!」
その堂々たる姿に皆、驚愕の表情を見せた。