第9章 駈けだす想い
クレアの両手がふさがっているのをいい事に、自身でも大胆なことをしてると自覚はある。
しかし昨日、倉庫で触れた時のクレアの髪は無惨にもボロボロだった。
もとの艷やかな髪に戻っているのか、何がなんでも確かめたかったのだ。
洗髪をし、香油の油分を吸った髪はいつもの艶を取り戻し、リヴァイの指をなめらかに流れてゆく。
ホッと安堵すると、顔を真っ赤にしながらカップを洗ってるクレアの横顔が目に入った。
男慣れしていない反応をこうも露骨にだされては、リヴァイの雄の本能に火がついてしまいそうだ。
さてどうするか…と思ったところで、執務室のドアがノックもなく無遠慮に勢いよく開いた。
ガッチャーーーン!!
「おはよーーーう!あーーーーっ!やっぱりクレア、ここにいた!」
勢いよく入ってきたのはハンジであった。
「おいクソメガネ!ノックくらいしやがれ!」
「えー?しなかったっけ?ゴメンゴメン!」
「何しに来やがった。」
「クレアが心配で、様子見に来たんだよー。それも私だけじゃないよ。」
「あぁ?!どういうことだ?」
するとハンジとは数秒遅れて入ってきたのは調査兵団団長エルヴィンだ。
エルヴィンは大きめのトレーに乗せられた山程の焼き菓子を持ってきていた。
「やはりここにいたか?クレア、体調は大丈夫かな?」
「ハンジさん!団長!お、お、おはようございます!!こんな時間にいったいどうされたんですか?」
「私もハンジも君のことが心配でね。クレアのことだから今朝もここにきていると思って様子を見に来たんだよ。」
「クレア、顔色は良さそうだけど、無理はしていないか?」
「はい、昨日ぐっすり眠ったおかげか、体調はすっきりしています。ご心配おかけしました…」
「それならよかった。昨日は夕飯を食べなかったそうだね?朝食までまだ少しあるからこれでも食べなさい。」
エルヴィンはトレーに盛られた焼き菓子を応接セットのテーブルに置いた。
「ありがとうございます!でも1人でこんなには食べられないので皆さんで頂きましょう。私紅茶淹れますね。」
賑やかになりだした執務室で部屋の主は盛大に舌打ちをするが、誰一人聞いてるものはいなかった。