第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
少し気不味そうにヒストリアが答えると、クレアは周りをキョロキョロと見やりながら小さな声で耳打ちをした。
「ねぇヒストリア…その作戦、私とヒストリアで成功させましょう?!」
「えぇ?!!」
「シッ…!!声が大きい!!」
「す、すみません…!!」
クレアはヒストリアが持っていたロープを手に取ると2人で編みながらコソコソと話を始めた。
「ヒストリアの気持ち、よくわかった。でも団長の言う事も間違ってない。それで、迷ってるんでしょ?」
「…はい…自分の覚悟は勿論ですが…このクーデターのために命を落としていった仲間の想いを考えると…団長の仰ってる事も間違ってません…これから女王になる私はいったいどうしたら…」
「そしたら…未来の女王様が、誰からも認められる立派な王になれるように、私にお手伝いをさせて?」
「クレアさん……?」
そう言うと、クレアは壁の内側に古びた馬車の荷台や、木材が無造作に積まれている場所を見つけると、何をするつもりなのかをヒストリアに話した。
「……私が……するから…ヒストリアは………する。わかった?」
「え?えぇ?!そ、そんな事…そんなにうまくいくでしょうか?」
その内容は、クレアがヒストリアになりすましてロッド・レイスを討つというものだった。
とんでもなく大胆な作戦だったが、自分の想いと死んでいった仲間の想いを考えると、クレアの提案を受けるしかないのだろうか。
「えと…団長の言葉を借りるなら…これも“博打”…かな?だけど、この作戦なら、ヒストリアの命は必ず守れる。それに成功すれば、ヒストリアは誰からも支持される立派な女王様になれるわ。これでいきましょ!」
「……え、えと…」
「クレアさん、そのロープ、持っていってもいいですか?」
「あっ、ミカサ。大丈夫よ、もう出来上がったから持っていって。」
ヒストリアが返答にまごついていると、ミカサがやってきてロープを持って行ってしまった。
「ほら、もう時間がない。準備よヒストリア!」
「準備って…?え?!」
ミカサがロープを持って去って行くのを確認するとクレアは少し背伸びをしてヒストリアの頭に手を伸ばした。