第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「私が女王として即位するからにはそれ相応の大義名分が必要ではないですか?裏で暴走していた父を私自らの手で討伐してこそ、私は民衆から認められる女王になれると思っています。なのでどうか私に…私に仕留めさせて下さい!!」
必死に訴えるがエルヴィンは静かに首を振り答える。
「君の考えは理解した…しかし、前代未聞のこの巨大な巨人だ。いくらなんでも戦闘の参加は許可できない。君を失えば今まで皆で頑張ってきたクーデターもお釈迦になってしまう。」
「団長…そこをどうか…!!」
「まぁ…もっとも…私のこの身体では君を止める事はできないだろうがな…」
「団長……?」
そう言うと、静かに去って行ったエルヴィン。
ヒストリアは悔しそうに奥歯を噛みしめながらうつむく。
女王になると決めたのなら、この父の暴走を自分が止めるのが娘としての義務だ。
それに、この状況を兵団の兵士におんぶに抱っこで凌いだ所で民衆は自身を真の女王だなんて認めないだろう。
しかし、ヒストリアはエルヴィンの言葉も理解できないわけではなかった。
このクーデターを成功させるために何人もの尊い命が失われた。
ここで自分の我儘で戦闘に参加して、戦死をしてしまったらいったいこの壁内はどうなってしまうのたろうか。
そして、死んでいった仲間達はどう思うだろうか。
「いったい…どうすれば…!!」
ヒストリアはやっと覚悟を決めたのだが、死んでいった仲間やこの壁内の未来を思うと、エルヴィンの制止を無視して強行突破をとる事はできそうになかった。
しかし…
「……ねぇ、ヒストリア……」
「……え?クレアさん?!」
突然声かけてきたのはクレアだった。
「ごめん…団長との話…聞こえちゃったの…」
「あ…いえ…別に聞かれて困る話ではなかったので大丈夫です…」