第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
作戦はこうだ。
大量の火薬を巨人化したエレンがロッド・レイスの口にぶち込んで、あわよくばうなじごと爆発させるというものだ。
あの高熱なら起爆装置がなくても勝手に燃えて爆発だ。
しかし、これにはいくつか問題点がある。
あの高熱を発しているうなじの表面を外側から爆破しても効果は望めない。
必ず内側から爆発させなければならないのだ。
だが、ロッド・レイスは顔面も腹も引きずりながら進んでいるため、口が開いているのか閉じているのか分からない。
“開く口”すら無いのであればそれはそれで好都合だが、それを確認できるのは、ロッド・レイスがこの壁まで到達し、手をかけて身体を起こすまでわからない。
この壁を乗り越えようとした時にうなじの内側に通じる口が潰れていたり、閉じたりしていれば、兵士達はなす術なく侵入を許してしまう事になる。
ハイリスクな作戦だが、もうこれしかなさそうだ。
毎度の博打に付き合わされるリヴァイ達は当然ため息をつくが、これがエルヴィンが団長を務める現在の調査兵団なのだ。
すぐに自身を納得させると、準備に取りかかった。
樽に火薬を詰め込んで、大きなネットで包む。
駐屯兵団の兵士によって次々に運ばれてくる樽を皆で並べ、積み上げていった。
「…………」
皆がテキパキと作業に取り掛かる中、エルヴィンはロープでネットを編んでるヒストリアに声をかけた。
「勝手な話だがヒストリア…ここを凌いだあかつきには、君にはこの壁の世界を治める女王となってもらう。当然こんな前線にいてもらっては困る。リヴァイからも言われただろう。下がりなさい…」
「団長…私には疑問です。民衆とは…突然現れた名ばかりの王になびくほど純朴なのでしょうか?」
「………」
「その事で私は私のやるべき事を見つけました。そのために今、ここにいるのです。」
ヒストリアは立ち上がるとエルヴィンに臆する事なく自分の意見を述べてみせた。