第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
あの摩訶不思議な巨人に向かって叫んでいるのはエレンで間違いないだろう。
だが何故ここに?
エルヴィンが疑問に思っていると、部下が慌てた様子で声をかけてきた。
「エルヴィン団長!リヴァイ班です!エレンとヒストリアの奪還に成功したもようです!」
「それは本当か?」
2人の奪還に成功したのなら目的地は礼拝堂ではなくあの巨人の討伐になる。
リヴァイ達はエレンの側にいるだろう。
エルヴィンは愛馬シェリルにエレンの所へ向かうよう命じた。
「今すぐ止まれ!!このチビオヤジ!!フン!!フン!おりゃあ!!止まれ!巨人!止まれ止まれ!!」
『ねぇエルヴィン…あれ本当にエレン?どうしてもあそこまで行かなきゃダメなの?』
巨人に向かって喚いていたかと思ったら突然勢いよく拳を振り回しだした。
シェリルからして見ればあまり近づきたくないのだろう。クルリと振り返ると、大きな黒い瞳でエルヴィンをジッと見つめた。
「そうだ…リヴァイ達はエレンの側にいるはずだ。この状況がわからなければどうする事もできないからな。頼む。」
先日ライナー達からエレンを奪還するために巨人の大群を連れて走らされた事を根に持ってるのだろうか。
エルヴィンは優しい口調でシェリルの頸を撫でながら再度命令をした。
『フン、わかったわよ…もう巨人の大群は連れてこないでね…』
「褒美は帰ってからゆっくりな…」
渋々納得したシェリルは、ブルンと鼻を鳴らすとエレンが叫んでいる馬車まで走り出した。
「止まれ!止まれ!!」
「うーん…反応はないみたいだね…」
「リヴァイ!!」
「エルヴィンか?!」
叫んでいるエレンの元までたどり着くと、やはりリヴァイがいた。
「皆は?」
「ハンジのみ負傷だ。」
「オーイ!エルヴィーン!!」
「ハ、ハンジさん!!お怪我に障ります!おとなしくしていて下さい…!!」
「大事には至って無いようだな…」