第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「まず、ロッド・レイスを“始祖の巨人”にするやり方にはいくつか問題があります。ひとえに洗脳を解くと言ってもそれはレイス家が何十年も試みてできなかった事の様です。また、力を得たロッド・レイスをどう拘束しようと人類の記憶を改竄されてはかないません。他にもこちらの知り得ない不足の要素が多分にあると考えるべきです。」
記憶の改竄。
ヒストリアの言う通り、ロッド・レイスがエレンを食えば本来の力を取り戻し、今までやってきた事の記憶を消され、パァになる可能性が高い。
非常に厄介な能力だ。
「むしろあの破滅的な平和思想の持ち主から“始祖の巨人”を取り上げている今の状態こそが人類にとって千載一遇の好機なのです!」
ヒストリアの考えは自己を犠牲にするやり方とは真逆のモノだった。
「そう…あなたのお父さんは、初代王から私達人類を救おうとした。姉さんから“始祖の巨人”を奪いレイス家の幼子ごと殺害したのも…それだけの選択を課せられたから…」
「父さん……」
ヒストリアの言葉で思い出したのは涙を流しながら注射器を手に取る父親の顔。
ーミカサやアルミン…みんなを救いたいなら、お前はこの力を…支配しなくてはならないー
父親が自分に必死に訴えたこの言葉に込められた真相はいったい何なのだ。
エレンは分からず頭を抱えてしまった。
「そうだよ!あのイェーガー先生が何の考えもなくそんな事をするわけがないよ!」
「そう!レイス家の血がなくてもきっと人類を救う手立てはある!だからエレンに地下室の鍵を託した…」
ミカサとアルミンはエレンの父グリシャをよく知る人物だ。
「エレン…私もそう思う…イェーガー先生は…人徳もあって聡明な先生だった。私の父もとても尊敬していたわ。だから、レイス家の人間を殺すだなんて…そうせざるを得ない理由があったに違いない。その真実はあなたの生家の地下室にあると私は信じたい…」
「クレアさん…」