第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「クレア…ありがとう。えぇと、エレンの中にある巨人の力を仮に“始祖の巨人”の力としようか…“始祖の巨人”の力はレイス家の血を引く者が持たないと真価を発揮できない。しかし、レイス家の人間が“始祖の巨人”の力を得ても“初代王の思想”に支配され…人類は巨人から開放されない…か。へえ…すごく興味ある。」
レイス家の血のカラクリはハンジの知識欲を心地良く刺激した様だ。
出血で顔色は悪いが、話す口調には力が入り先程より元気だ。
「初代王いわくこれが真の平和だって?面白い事を考えてるじゃないか…」
「………」
すると、今度は思いつめたような表情のエレンが口を開く。
「つまり…まだ選択肢は残されています。オレをあの巨人に食わせれば、ロッド・レイスは人間に戻ります。完全な“始祖の巨人”に戻す事はまだ可能なんです。」
「……そんな!!」
確かにエレンの父親が奪った“始祖の巨人”の力をあるべき所に戻す事は可能だ。
たが、それがこの壁内の未来を明るくする正しい選択なのかは別問題。
勿論だが、ミカサは大反対だ。
「そうみてぇだな…」
「……!?」
「人間に戻ったロッド・レイスを拘束し、初代王の洗脳を解く。これに成功すりゃ人類が助かる道は見えてくると…そして、お前はそうなる覚悟はできてると言いたいんだな?」
「…はい!」
エレンは何が何でも自分を犠牲にして世界を救いたいわけではない。
だが、父親の記憶を鮮明に見てしまった以上、このままのうのうと生きていく事が罪のように感じてしまい、どう考えを巡らせても結局は自身を犠牲にするやり方しか思い浮かばなかった。
「エレン…私はそんな事……」
「いえ!選択肢はもう1つあります!!」
ミカサが何かを言おうとしたのたが、ヒストリアはそれを遮ると、エレンの選択肢とは真逆の意見を力強く語りだした。