第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「あれが…巨人?」
少なくとも今まで見てきた巨人は二足歩行をしていたし、その大きさに似つかわしくない程の俊敏さもあった。
だが、陥没した地面のその先を見ると、ゆっくりゆっくりと這うように進んでいる巨体。
どっちが頭でどっちが尻なのか遠目では分からない。
「色々変だ…超大型巨人の倍くらいあるし、余程高温なのか…奴が近づいた木々は発火している。何より近くの人間…僕らに興味を示さない…」
「奇行種…ってことか?」
「元の人間の意志で操ってなければだけど…何があったの?」
アルミン達はあの巨人の正体がロッド・レイスである事は分かっていたが、その経緯までは分からなかった。
「おい、とにかく追うぞ!周囲には中央憲兵が隠れているかもしれん…警戒しろ。エレンとヒストリアはハンジと一緒に馬車の荷台に乗れ!クレア、お前もだ。」
「は、はい…!」
一行はクレア達が避難させておいた馬に乗り、すぐさま礼拝堂を後にした。
ーガラガラガラガラー
荷台に乗せられたヒストリアは膝を抱えながら、地下洞窟で起こった事を全て皆に話した。
調査兵団は、この短期間で数えきれない程出鱈目な出来事に遭遇してきたが、ヒストリアが今話した内容はここ1番衝撃的な内容だった。
真の王家は巨人の力を使い人類の記憶を改竄できる。
代々受け継がれてきた力は、初代王の思想まで継承されてしまう。
自分達の祖先が記憶を改竄されていた辺りは衝撃的すぎて、皆言葉を失ってしまう程だった。
「えぇっと、つまり……」
そんな中口を開いたのはハンジだった。
「ハンジさん…大丈夫ですか?」
「うん…なんとかね…」
傷が痛みだしてきたのだろうか…
右肩に手を当てながら喋りだすハンジを見たクレアは、バッグから薬と注射器を取り出すと、ハンジの肩に追加の麻酔薬を投与した。