第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
父親の罪に自分の存在意義を知ったエレンは駄々をこねる子供の様に泣き叫んだ。
「うるさいバカ!!泣き虫!!黙れ!!」
ーゴンッ!!!ー
「な……!?」
しかし、その駄々をこねた泣き言に返ってきた言葉は、ヒストリアらしからぬ言葉だった。
ヒストリアは周りの女兵士の中では“可愛い”部類に入る。あのライナーが分かりやすく鼻の下を伸ばしていたし、アルミンもまだ新兵の顔と名前が一致してなかったハンジに対して“可愛い”と形容していた。
そのヒストリアが“うるさいバカ”と言い、“黙れ”と命令口調で怒鳴りゲンコツを落とした。
メソメソと泣き言を言っていたエレンも、この豹変ぶりに涙が引っ込んでしまった様だ。
「巨人を駆逐するって?!誰がそんな面倒な事やるもんか!!むしろ人類なんか嫌いだ!!巨人に滅ぼされたらいいんだ!!」
「ヒストリア…?!」
「つまり私は人類の敵!!わかる?!最低最悪の超悪い子!!私はエレンをここから逃がす!!そんで…全部ぶっ壊してやる!!」
そう叫んで胴体を拘束していた鎖を解いて投げ捨てると、今度は膝をついて足の拘束を解く鍵を探し始めた。
この時ヒストリアもエレンも見えていなかった。
実の娘に背負い投げをされ頭を打っていたロッド・レイスが割れた注射器からこぼれた薬液に向かって這っている事を…
「ハァ…ハァ…父さん…ウーリ…フリーダ…待ってて…今…僕が……」
頭を打って意識朦朧とする中、なんとか薬液の側まで辿り着いたロッド・レイスは舌を出すと、半分蒸発しかけた液をその体内に送り込んでしまった。
ードォォォォォンッ!!!ー
その瞬間、洞窟内は爆発音と共に巨大などでは言い表せない程の巨人の骨格が現れた。
「うぉ!!ロッド・レイス…あの野郎…巨人になりやがったな!!」
ロッド・レイスが巨人化した事により生じた爆発と爆風でケニーは宙吊りになってしまった。