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ハンジ班の奇行種【進撃の巨人/リヴァイ】

第64章 それぞれの決断に、変わる風向き






「…何でよ?!…エレン、何で巨人化しないの?私が巨人になれば…食べられるんだよ…そのままだと…」



「…………」



こんな危機迫る場面だというのに、エレンは力なくうなだれ、額から血を流している。

どうりで静かに感じたわけだ。

エレンの顔面を濡らしているのが血の涙の様に見えたのは気のせいではないだろう。




「…いらなかったんだよ…」




血の涙を流しながらエレンは今にも消えて無くなりそうな声で呟く。




「え……?」




「オレも…オレの親父も…親父が5年前にここでこんな事をしなければ…お前の姉ちゃんが全て何とかしてくれるはずだったんだろ?オレと親父が巨人の力をあるべき所から盗んだせいで…一体どれだけ人が死んだ…トーマス…ミーナ…ナック…ミリウス…マルコ…リヴァイ班のみんな…ストヘス区の住人…オレを助けようとした兵士…ハンネスさん…オレには…償いきれない…」



自分が巨人化できる様になったのには何か大きな理由があるのだと思っていたエレン。

幼き頃に母を殺した巨人を憎み、人類をこんな狭い壁の中に追いやった巨人を憎み、いつかこの手で駆逐してやると…

そんな感情を糧に今まで戦ってきたが、自分が巨人化できる様になったのは父親が罪なき子供達を殺した暴挙ゆえだった事が今分かった。


父親がなぜこんな事をしたのかまでは分からないが、自分はただレイス家が代々継承してきた大事な力を入れておく器でしかなかったのだ。




あの日、審議所の地下牢で言ったセリフが何度も頭の中でリフレインする。



ー「巨人を駆逐してやる…!!」ー



エルヴィンとリヴァイの前で叩いた大口。

真実が紐解かれると駆逐されるべきなのは自分だった。

もう今のエレンに巨人化してヒストリアと戦う理由なんてなかった。




「いらなかったんだよ、あの訓練の日々も、壁の外への夢も…オレは…いらなかったんだ…」



「エレン……」



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