第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「東洋人である母の一族は人種の違いからか街に居場所を失い、お互い壁の端の山奥に追い詰められた者同士が出会って夫婦となったのです。なぜアッカーマン家が迫害されていたのかは父にも分かりません。母の様な人種的な差異が父にあった様には見えませんでしたし…」
「…………」
ミカサは母親の東洋人である血を強く受け継いでいる顔つきをしているが、ケニーには人種的な差異は今も昔もなかった。
だが、リヴァイはミカサとケニーの共通点に気づくと、ある質問を投げかけた。
「お前…ある時突然力に目覚めた様な感覚を経験した事があるか?」
そう、その共通点とはミカサの軍を抜いた圧倒的強さだ。
圧倒的な強さで言えばクレアも軍を抜いている。
だが、クレアの強さとミカサの強さには何か異なるモノを感じていたリヴァイ。
ケニーの姓が判明した事でやっとその謎が解けた様な気がした。
「……あります。」
ミカサは今でもはっきりと覚えている。
決して悪れる事なんてできない…
あの時の…
両親が惨殺された時の事を…
「ケニー・アッカーマンにも、その瞬間があったそうだ。ある時…ある瞬間に、突然バカみてぇな力が体中から湧いてきて…何をどうすればいいか分かるんだ…そしてその瞬間が、俺にもあった…」
やはりミカサにも“その瞬間”があった。
となると、アッカーマン家というのは、何か特別な力や謎を秘めた血族だと想像してもおかしくはないだろう。
ミカサとケニーは近い親族ではなくとも、同じ血が流れている。
だが、そうなると疑問点が1つ。
なぜリヴァイ自身にも“その瞬間”があったのかだ。
リヴァイに姓はない。
というか、幼き頃に母親を亡くしたため知らない。
自分もこのアッカーマン家となにか関係があるのだろうか。となると…ケニーがあの時、あの場所に現れたのは偶然なのか、はたまた必然だったのか…
すぐに答えは出なかった。