第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
雷の様な衝撃と共にありえない映像が目の前で繰り広げられる。
教会…?
礼拝堂…?
光る洞窟に…
知らないに人間…
いや、1人はロッド・レイスだ。
そして黒髪の女は一度記憶の混濁が出た時に見た女だ。
これは…何だ…オレの見たものじゃない…違う…!!誰の記憶だ!?
エレンが次々に飛び込んてくる映像に混乱していると、この洞窟にいたであろう人間が皆殺しになり、ついには自分が覚えている記憶とぶつかった。
手の中に握らされた鍵。
そして注射器。
泣いている幼き頃の自分。
エレンが見たのは、巨人化した父グリシャが礼拝堂にいたレイス家の人間を殺し、その後にエレンを巨人化させて自身を食わせたという何とも信じがたいモノだった。
「と…父さん……」
「どうだ?思い出したか?父親の罪を。」
背後からかけられた声で、映像が消え、エレンは我に返る。
後ろから2人の会話を聞いていると、ヒストリアも何か思い出した様だ。
その会話に耳を傾けると、父グリシャが殺した巨人化した黒髪の女フリーダ。
彼女はヒストリアの腹違いの姉だったらしい。
そして父グリシャはフリーダことレイス家が代々継承してきた全ての巨人の頂点に立つ存在…いわば無敵の力を持つ巨人の力を食って奪った様だ。
そんな話を聞いていたら物陰から1人の男が出てきた。
「オイオイオイオイ!まだくっちゃべってたのか?さっき状況は話しただろ?全兵団が寝返ってクーデターは大成功っていう大変めでてぇ状況だってよ。ここが見つかるのも時間の問題だともな。さっさとやる事済ませてくれ!」
「あぁ…そのつもりだが…」
この男はヒストリアの母親を殺した男だ。
という事は中央第一憲兵の人間だ。
ロッド・レイスに対して物怖じしないデカイ態度で話すあたり、中央第一憲兵を取りまとめている上官なのだろう。
しかし、制圧部隊は離れる必要がある事を話すと、ケニーと呼ばれた男はおとなしく去って行った。