第9章 駈けだす想い
そして、クレアが襲われてる姿を見た瞬間、自分の怒りの感情の爆発のしかたといったら尋常ではなかった。
──クレアは自分の恋人ではない──
そんなこと頭ではわかっている。
しかし自分の女を汚されるというのは、あんなにも怒りが沸騰するものなのだろうか。
あの時は、今すぐにでも殺してやりたい気分だった。
クレアは誰にも触られたくない……
そして、クレアの口が求める男の名前はいつだって自分でなければ気がすまない…
リヴァイはクレアに対する気持ちが、自身の意志と関係なく、どんどん駆け出しているとこに若干戸惑ったが、抗うことができず、ただこの感情に身を任せるしかなかった。
再び盛大なため息をつくと、リヴァイは執務室をでてある場所にむかうことにした。
目的の場所につくと、壁に背中をつけ、腕を組みながらその時を待つ。
数分待ったであろうか。
しんと静まりかえった早朝の廊下の空気に、かすかに花の香りが混じり出したのにリヴァイは気づくと、そちらに向かって歩きだした。
──コツコツコツ──
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クレアは近付いてくる足音から逃げることもできずにいると、姿を現したのは今まさに向かおうと思っていた部屋の主だった。
「え?リヴァイ兵長……」
「おい、奇行種。こんな時間に何うろついてやがる。」
不機嫌そうにこちらを睨むと腰に手を当て、威圧感をたっぷり漂わせ立っている。
「あ、あの…いつもの時間に目が覚めてしまって……体調も悪くないので、兵長の部屋に行こうかと…」
「ハッ、見上げた根性だな。……いくぞ。」
リヴァイはくるりと反転して歩き出した。
クレアは慌ててその後を追う。
「あ、あの。どうして兵長はここに?」
「お前のことだ。昨日の今日でも執務室にくると思ったから、迎えにきたまでだ。感謝しろよ。」
「へ、兵長……」