第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「それも仲間を見捨ててな!!お前らが出頭しなければ囚われた調査兵は処刑される!!お前らのやった事を考えれば世間も納得する当然の報いだ!!最初は調査兵団最高責任者であるエルヴィン・スミスからだろう。…ただし、お前らが独断でやった事だとその首を差し出すのなら…他の団員の命だけは何とか助かるだろうがな…」
このヒゲ男は侮辱する言葉だけではなく、なんとも卑劣な交換条件を提示してきた。
「……ペッ。分かったかリヴァイ…もうあんたがやれる事は…それしか無いんだよ。お前の命を使って、仲間の命を救う…それだけだ…俺が口を利いてやろう、そうすりゃ上手くいく…」
ヨロヨロと立ち上がりながら、上から目線な口調は変わらない。
馴れ馴れしくもリヴァイの肩に手を置き、いかにも優しく諭してるかのような態度だ。
「イヤ、遠慮しておこう。お前はエレンとクリスタの居場所を言え…」
「……………」
当然だがリヴァイの返事はノーだ。
この手のタイプの人間は虫唾が走る程嫌いだが、リヴァイはなんとか怒りをおさえ、3度目の要求をする。
「…へぇ、仲間を見殺しにして無駄に生き延びるか。そりゃ…また絆の深ぇ事で……」
「…まぁな、調査兵団の命には優先順位ってもんがある。それを承知の馬鹿者の集まりが俺らだ!!!」
ードンッ!!!ー
「うぅっ!!!!」
「そもそも王政が調査兵団を根絶やしにする絶好の機会を俺らの首程度で逃がすとは思えねぇな……」
「ッーーーー!!!」
「それとさっきの質問に答えなかった分がこれだ…!」
何度も冷静に聞いてやったというのに、まともに質問にも答えず、いかにもその場しのぎの条件など提示された事で、リヴァイも穏便に話を進めるのは無理だと判断した様だ。
肩に置かれた手を掴み背中に回して締め上げると、そのまま力任せに腕の骨を折ってみせた。
ーバキィッ!!!ー
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
腕がギシギシと軋みながら折れると、ヒゲ男は悲痛の叫び声を上げながら木にもたれ膝を着いた。