第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
リヴァイは、必要とあらばするだけで決して人殺しが好きなわけではない。
できないわけではないが、大量殺人なんかをすれば当然後味が悪い。
そして104期のメンタル面も配慮し、リヴァイは館の人間の脚を狙う様命じ、殺す事はしなかった。
「まぁどっちにしろ、これで中央憲兵はしばらく使い物になんねぇよ。」
「ははっ、勇ましい事で…丸腰の憲兵を片っ端から斬っちまえば誰でも英雄を気取れる…だが言っとくが、あの屋敷には…何も知らない使用人も含まれていたんだ。お前らが見境なく斬った中にも確実にな……ガハッ!!??」
ヒゲ男の言葉にサシャとコニーにジャンの顔色が少し曇った。
すると、リヴァイはそれ以上余計な事を喋ってくれるなとばかりにヒゲ男の口に自身の右足を突っ込む。
「ッーーーーー!!!」
リヴァイの蹴りで何本か歯が折れたのだろう。
声なき呻き声を上げながらリヴァイの足をどかそうと両手で掴むが、自身の口に突っ込まれた足はビクトもしない。
「あぁそうか…それは気の毒な事をしたな。俺だってかわいそうだと思っている。だから殺さなかったんだろうが…だが俺は今のあんたの口の方が気の毒でしょうがない。まだまともに喋れる内に口を使った方がいいぞ。」
「ッーーーー!!!」
「もう一度聞く…エレンとクリスタはどこだ?」
「ガハッ!!ゴホッ!!ゲホッ…!!ガハッ!!」
突っ込んでいた足を引き抜くと、ヒゲ男は血飛沫を上げながら咳き込んたが、語られたのはリヴァイ達の求めるモノではなかった。
「ハァ…ハァ…無駄だ!無駄なんだよ…お前らが…何をやったって…ゴホッ…調査兵…お前らにできる事はなぁ…この壁の中を逃げ回って!!せいぜいドロクソにまみれてセコセコ生き延びる事だけだ!!!」
「…………」
歯が抜けてなくなった箇所から血を流しながらも、このヒゲ男はリヴァイの質問に答えず調査兵団を侮辱する言葉を吐いた。