第63章 敗北ばかりの調査兵団
「そんな事は…」
マルロの意志は固かったが、リヴァイからしてみれば、こんな非常時にいきなりそんな事言われても信用できるわけがない。
新兵ばかりに仕事が押し付けられる風習は変わってないが、それでも調査兵の新兵より給金も多く、待遇もいい。
文句を言わずに仕事をしていれば、それなりの生活が保証され、十分な親孝行もできてしまう。
そんな生活を棒に振るい、尚かつ法に背く行為を自ら進んでやる頭のおかしい人間が、憲兵の組織にいるなんで誰が信じられるか。
リヴァイは冷静にノーと突っぱねた。
「行くぞ。サシャ、2人をその辺に拘束しろ。」
「はい!!」
「……………」
確かにリヴァイの判断は正しい。
憲兵を探る任務を任せて、逆にこちらの居場所を教え裏切る可能性だってゼロではない。
更にこの状況下で調査兵を拘束する事ができれば、たとえ上司に手柄を持ったいかれたとしても、それなりの評価はされるはずだ。
マルロ達にとっては、これを好機に昇進も夢ではないのだ。
だが、ジャンは考えた。
もし、本当に、本当にこのマルロという男が組織を、体制を、王政の在り方を正したい、調査兵団の味方になりたいというのであれば、確実に風向きが変わるはずだ。
「待ってください兵長…!俺に…やらせて下さい!!」
昨日の失態を挽回したかったジャンは2人の拘束を自身がやると申し出る。
ジャンはなんとなくだが、マルロの言ってる事は本心だと思った。
だが、それには本当にマルロが自身の命に変えても法に背き、この体制を正したいという嘘偽り無い確固たる証拠が必要なのだ。
安全牌を取るなら勿論ミカサとアルミンが潜入する事だ。だが、それには危険も伴い失敗する可能性もある。
しかし、マルロの身の潔白が証明されるのであればどうだろうか?
戦局は、調査兵団側に傾くはずだ。
そう思ったジャンは、今の自分にできる事をして、仲間を死の危険から守りたかった。