第63章 敗北ばかりの調査兵団
「いいや、違う。潜伏していた巨人の正体がアニ・レオンハートだったからだ。ヤツは今地下深くに捕らえられている。末端の新兵まで知っていい事じゃねぇがな…」
「……え?」
ジャン達も同じ104期の新兵だが状況が違う。
アニに疑惑が上がり、アルミンが一部作戦を立てた事により、ここにいる全員はあの時の街での乱闘の真実を知っていた。
だが、そんな事を知らされていなかったマルロとヒッチはアニの正体に驚愕し開いた口が塞がらなかった。
「まったく…イヤになるよな。この世界の事を何も知らねぇのは俺らもみんな同じだ。この壁の中心にいる奴ら以外はな…お前達は…俺らがここを離れるまで拘束するが、出発と同時に開放する。お前らの足より遅れるようじゃ…どの道無理な話だからな…」
「アニが…そんな…」
「……………」
何も知らされない事、腐り切った上層部…
ずっと自身の所属兵団に疑問を持っていたマルロは、ある覚悟を決めると震える声でリヴァイの名を呼んだ。
「リ、リヴァイ兵士長…!!」
「あ?」
「あなた達が間違ってるとは思えません…本当に…調査兵団がリーブス商会を…民間人を殺したのですか?!」
「…会長らを殺したのは中央憲兵だが、何が事実かを決めるのはこの戦に勝った奴だ。」
やはり、調査兵団は濡れ衣だった。
マルロの中の何かがコトリと動く。
気付けばマルロは叫んでいた。
「俺に協力させて下さい!!この世界の不正を正す事ができるのなら俺は何だってやります!!中央憲兵を探る任務なら俺にやらせて下さい!変装なんかよりずっと確実なはずです!!」
「……なんだお前は?」
マルロは自分が憲兵団に入った理由を懸命に訴えている。
そんな姿を見てジャンは今は亡きかつての仲間を思い出す。
「…だめだ、お前に体制を敵に回す覚悟があるかなんて俺には計れない。お前の今の気持ちが本当だとしても寝て起きたら忘れちまうかもしれねぇしな。」