第63章 敗北ばかりの調査兵団
「…………」
リヴァイだって変装したミカサ達に任せるリスクは承知の上。
だからこそマルロの協力は喉から手が出る程欲しいのだが…
今のジャンの表情は、この2人の信用度を証明してみせるとリヴァイに訴えている。
昨夜のジャンの決意から考えると、もうしくじる事はないだろう。
「…任せる。」
リヴァイはそう返事をしてジャンにナイフを渡すと、背中を向けた。
「あ、あの兵長…ジャン、大丈夫でしょうか…」
「あぁ…ジャンには何か考えがあるんだろう。きっと大丈夫だ。」
クレアは昨夜、深く自身を責めていたジャンの事を心配していたが、リヴァイは大丈夫だと一言返事をすると、出発の準備を始めてしまった。
「ジャン……」
もう見えなくなってしまった細い道を見つめながらクレアも出発の準備をしていたのたが、意外な事に、20分もたたないうちにジャンはマルロとヒッチを連れて戻ってきた。
のだが……
「ジャ…ジャン!?いったいどうしたのよ?!!!」
ジャンの右のこめかみが青紫に腫れて血が流れている。いったいこの短時間で何が起こったというのだ。
「リヴァイ兵長!!マルロは本気です!!本気で調査兵団に協力する気です!!俺が…マルロの覚悟をこの目で見ましたから…大丈夫です!!」
その場にいた全員、ジャンがどんな方法を使ったのかは分からなかったが、血を流しながらも昨夜とうってかわって晴れやかな表情をしている。
マルロの覚悟を見たというのは本当なのだろう。
「そうか…了解した。」
身体を張ってマルロの覚悟の深さを見抜いたジャンのおかげで、リヴァイ班は予想外の協力を手にする事ができた。
敗北ばかりの調査兵団。
風向きはどう変わるのか…