第63章 敗北ばかりの調査兵団
「104期にも折を見て話すが、ケニーは手強いぞ…その部下たちがケニーの訓練を受けてきた精鋭なら余計に厄介だ…別に俺に変な遠慮や情はいらねぇ。ヤツもその部下も、殺せるなら殺せ。躊躇うんじゃねぇぞ。」
「は、はい……」
自分には両親がいて、兄弟や姉妹はいなかったが、それなりに愛情をもって育てられてきたのだとクレアは思う。
自身の生い立ちに、そして今は亡き両親に対して負の感情がないあたりがいい証拠だろう。
だからこそクレアは、例え短い期間だったにせよ、娼館から連れ出して育ててくれたケニーに刃を向ける事に胸が痛むのではないかと心配したのだが、その心配は杞憂だった様だ。
「それと…」
「……!?」
「無茶して死ぬんじゃねえぞ…」
「兵長……あっ!!」
そう言うとリヴァイは、周りを警戒しながらも左手でクレアの頭をグシャっと何度か撫でた。
そんな事をしていたら東の空がじんわりと明るくなってくる。
間もなく日の出だ。
「……もう日の出か…おい、クレア。休まなくて本当に大丈夫だったのか?」
リヴァイが思っていたより日の出は少し早かった。
よくよく考えればこの所、日が沈むのが少し遅くなってきている。
段々と春も後半にさしかかってきてるのだろう。
リヴァイは極端に睡眠時間が短くなってしまったクレアの体調を気にしたのだが、当の本人の表情は意外にも明るかった。
「兵長、私は大丈夫です…兵長の側にいられて、気持ちも落ち着きました。ありがとうございます…私、ニファさん達の死を無駄にしたくありません!!なので…今日も悔いの残らない様に精一杯戦います!!あっ、そしたら少し早いですが私、朝食の準備してきますね!」
ぴょんっと跳ねてリヴァイの顔を覗き込みそう言うと、クレアはパタパタと小屋の中まで走って行ってしまった。