第63章 敗北ばかりの調査兵団
「ある日突然俺の前から去って行った男がまさか中央第一憲兵にいるなんて誰が思うかよ…だが、俺の思考はケニーの影響が強いからな。リーブス商会と手を組んだ事や、尾行を読んだあたりといい、ヤツが絡んでる事に関しては妙に納得がいった。」
「そ、そんな……幼かった頃の兵長を面倒見た方がどうして兵長を殺そうとするんですか?!兵長にとっては育ての父親の様な存在ではなかったのですか?!」
「そんな事…俺が知りてぇくらいだ。…そういや、人生の目標とかなんとかぬかしてやがったな…きっと自身の成し遂げたい事の中に、調査兵団をぶっ潰すっていう項目が入ってたんだろう。大いなる目的のためなら殺しまくりだとも言ってたしな…」
「で、ですが……」
「それにヤツを父親の様に思った事などない。どんなに腐った場所でも生きていくための処世術を叩き込まれたんだ。ご近所付き合いと言う名の恐喝や、ナイフの握り方…殺し方なんかも全部ヤツから仕込まれた。普通の親はそんな事は教えないだろ?」
「そうかもしれないですが…兵長はそれでいいんですか?」
「何がだ?」
「短い期間だったかもしれないですが、生き方を教えてくれた方です。…兵長はそんな方と戦う事になってもよろしいんですか?」
ニファを殺した人間は勿論憎いが、リヴァイとニファを撃った人物に、そんな過去があったなど知らなかったクレアは思ったままを問いかけたのだが、リヴァイの表情は少し驚いていた。
「……………」
リヴァイはクレアの目を見つめたまま黙ってしまったが、すぐに答える。
「そんな事を聞かれるとは思わなかったな…確かに、今俺がこうして生きていられるのはヤツのおかげかもしれない。だが、理由はともかく大勢の部下を率いて俺達を殺しにきてるんだ。実際今日、3人もの仲間を殺されたんだ。俺の中にヤツと戦うのに迷う理由なんてねぇよ……」
そう言うと、心配そうな顔をしていたクレアの頭をそっと撫でた。