第63章 敗北ばかりの調査兵団
「クレアは、切り裂きケニーを知っているか?」
「え?……えと…、聞いた事はあるにはありますが…昔父から聞いた話だったと記憶しております。都での大量殺人鬼事件ですよね?詳しくは覚えておりませんが…」
「そうか…俺が地下街で生まれて幼い頃に母親は娼館で死んだという話はした事があったよな?」
「はい……」
「あの話にはまだ続きがあってな。」
「続き…ですか?」
「あぁ…母親が死んだ時、俺はまだ4歳だった。行くあてもなかった俺は母親の遺体と何日か一緒の部屋にいたんだ。もう所々記憶も欠落しているが、食べる物も飲む物も尽きて部屋の隅に座っていたら、知らない男が現れて、俺をその部屋から連れ出して暫く面倒をみてもらったんだ。」
「…兵長、まさか……」
「あぁ、そのまさかだ。俺はその切り裂きケニーと暫く生活を共にしていた。まぁ、“切り裂きケニー事件”はだいぶ後になってから知った事実だがな…それに面倒をみてもらったというか…生き方を叩き込まれたといった感じだったな…」
「その、ケニーさんは何故兵長を?お母様のお知り合い…だったのですか?それとも…」
「ケニーは母親の本名を知っていた。だから何度か指名をした客だけという間柄ではないとは思うが…俺は母親以外に血の繋がった親族や親戚を知らないからな…結局ケニーと母親、俺自身の関係は分からずじまいだったんだ……今日の今日までな…」
「ど、どういう事ですか…?」
リヴァイは思い出話を懐かしんでいる感じではない。
なんとなくよくない話が待っている予感がしてならなかったクレアの拳の中は変な汗でにじんでしまっていた。
「今朝の襲撃で俺とニファを撃ったのが、その“切り裂きケニー”だったんだ。」
「え……!?」
リヴァイを育てた男がリヴァイを撃った。
クレアはあまりにも信じがたい内容に、変な声を上げてしまった。