第63章 敗北ばかりの調査兵団
「…クレア?」
「…私、まだ兵長の側にいたいです…」
嬉しい申し出だが休める時に休んでおかないと危険だ。
「駄目だ…落ち着いたならもう休め…」
リヴァイは厳しく小屋に戻る様に言ったのだが…
「い、嫌です……」
クレアは頑なに言う事をきかなかった。
嫌だと言いながら自身の背中に回した手にギュッと力を入れるクレア。
頭に血がのぼるとバカみたいな力を出すくせに、今は嫌だと言って、すぐに振りほどいてしまえる程の力で必死にしがみついている。
「……………」
この小さな恋人は、どこまで可愛いと思わせれば気が済むのだ。
どこまで自分の心を掻き乱せば気が済むのだ。
リヴァイは溜息をつくと、小さく両手を上げて降参した。
「分かった…そのかわり、疲れたらすぐに中へ戻れよ…」
「はい…ありがとうございます…」
リヴァイが観念すると、クレアは嬉しそうに頬を緩めながら離れ、隣で肩を並べて見張りを始めた。
「……………」
何も言葉を交わさなくても、こうして側にいられる事がどんなに幸せな事か、クレアは良く知っている。
ピッタリとくっついた互いの肩が温かい。
ニファ達を失ってしまった今のクレアは、身体を横にするよりも、こうしてリヴァイの隣にいる事のほうがよりずっと心休まった。
このまま黙って見張りをしているだけでもクレアは十分だったのだが、リヴァイは視線を周りに光らせたままとある事を話し始めた。
「クレア…」
「…な、なんでしょう?」
「別に隠していたわけではなく、言いたくなかったわけでもないが、お前には話していなかった事があったんだ。」
「兵長…?いったいどんなお話ですか?」
思ってもみなかった展開にクレアはリヴァイの顔を覗き込んで続きが語られるのをじっと待った。