第63章 敗北ばかりの調査兵団
大切な仲間を3人も失って悲しいはずなのに、何故一滴も涙が出てこないのだ。
この手で人を殺して、自分の中の大切な何かが壊れてしまったのだろうか。
そんな事を考えていたら小屋の扉が開く音がした。
「あ…兵長……」
次の見張りはリヴァイだった。
「…あと3時間程で日の出だ。眠れるうちに眠っておけ。」
リヴァイはクレアから銃をひったくるように取ると、早く休めと手をヒラヒラと振るが、クレアは小屋へは戻らなかった。
「あの…兵長…1つ、うかがいたい事が……」
「なんだ?」
「どうしてあの瓶を兵長が……」
「…………」
そう、あの時、ジャンが撃たれそうになった時、そのピンチを救ったのはクレアがニファに渡した物だった。
あの瓶の存在はニファと自分しか知らないはず。
別にリヴァイに秘密にしていたわけではないが、何故リヴァイが持っていたのかクレアは知りたかった。
「……霊柩馬車が宿泊した宿屋の前でニファと見張りをしていた時に、クレアが作って渡してくれたと見せてくれたんだ…」
「…え?」
「余程嬉しかったんだろう…礼に、このクーデターが無事に終わったらお前を連れ出したいからかしてくれと、そんな話をされていたんだ。」
「でも、どうして兵長が…」
「気づいたら手に取っていた…」
「……?!」
「俺とニファは同時に発砲された。俺は運良く避けられたが、ニファは顔面を撃たれて即死だった…その時、身体が散弾の衝撃で仰け反った勢いで二ファのポケットから飛び出してきたんだ。気づいたらこの手に取っていた。」
「そう…だったんですね…」
「お前がニファのために作った物を勝手に使っちまってすまなかったな…だが、あれがあったから時間稼ぎができた。本当に助かった…」
そう言ってリヴァイはクレアの頬を手の甲で優しく撫でると、目の奥がジワリと熱くなるのを感じた。