第63章 敗北ばかりの調査兵団
「……………」
ジャンが小屋の扉を閉めると、再びシンと静まり返る。
調査兵団に入団して3年目。
まさか巨人化する人間が現れるとは誰が想像できただろうか。そしてその壁内での歴史上、最もショッキングな事件が、どうやら王政、中央第一憲兵が深く関わっている事が分かった。
この壁内の歴史は人為的な何かで情報操作されていた可能性も高い。
元の生活を取り戻すには、エレンとヒストリアを取り戻した上で現状の王政システムを無理矢理にでも奪わなければならない。
簡単に言えば内乱、内戦で勝ち取らなければならないのだ。
自分だって人を殺す事に最後まで抵抗があった。
だが、自身は調査兵団で2年生き残ってきた身。
今まで志半ばで旅立ってしまった仲間のためにも、心臓を捧げたハンジのためにも、そして生まれて初めて恋をしたリヴァイのためにも、クレアはどんな命令にも従うと自身の心に誓っていた。
だがジャン達はまだ15歳の新兵。
壁外調査で巨人を討伐するために入団したというのに、こんな内乱に身を投じる事になるとはあまりにも酷だ。
「みんな……」
そんな中でも戸惑いながら必死に戦う104期の姿を思い返すと、クレアはあまりの過酷さに胸を痛めた。
涼しい夜風が吹く中、クレアは小屋の周りを何度か行ったり来たりしながら見張りを続けた。
「ニファさん…ケイジさん…パドリックさん…」
静かな夜空の下で1人になると、ふと3人の顔が浮かんだ。3人は中央第一憲兵の奇襲にあい、散弾銃で即死だったという。
詳しく聞く事はできなかったが、もう3人はこの世にいないというのはまぎれもない事実。
せっかく同じハンジ班として仲間になれたのに…
こんなに早く別れる事になってしまうなんて…
悲しい…苦しい…こんなの辛すぎる…
でも、不思議とクレアの目から涙が出る事はなかった。