第9章 駈けだす想い
「クレア、このジャケットは洗濯したほうが良さそうだね。明日は予備のを着るといいよ。」
「あ、わざわざ持ってきてくださったんですね。ありがとうございます。それと、そのシャツと下着はもう無理そうですね…捨ててしまいましょう。」
「クレアくん、また何か心配なことがあったらすぐにくるんだよ。今夜も、眠れなかったら医務室に来なさい。私は奥の仮眠室にいるからね。」
「ありがとうございます先生。失礼します。」
お辞儀をすると、2人は医務室を後にした。
廊下を歩きながら窓の外をみると、オレンジ色の夕陽はだいぶ傾き、暗くなり始めていた。
夕飯を済ませた兵士も多く、兵舎内は少し賑わいを見せてる。
「クレア、夕飯はどうする?部屋まで持っていこうか?」
「あ、いえ。今日はもう何も食べたくないので…明日の朝食べることにします…」
そう答えると、ハンジは無理に食事をすすめようとはせず、クレアを部屋まで送ってくれた。
「ハンジさん、ありがとうございます。明日、体調が悪くなければ、訓練にでたいので宜しくお願いします。」
「ん、わかった。今日は早めに寝るんだよ!おやすみ。」
クレアの頭をポンポンと叩くと、ハンジは食堂に向かって行った。
自室に入ると、心配でいてもたってもいられなかったフレイアから抱きつかれ、軽くフラついてしまう。
心配をかけた詫びと着替えを用意してくれた礼をすると、クレアはバッグから洗濯物を取り出し、ポイポイと洗濯カゴにいれていく。
すると、コツンと香油の瓶が指に当たったのに気づき、いつもの引き出しにしまった。
「あ、クレア、勝手に引き出しあけちゃってごめんね!着替えを兵長に渡した時に「あいつがいつも髪につけてるやつもいれろ…」って言われたから、勝手にあけちゃったの…」
「え?兵長が?私はてっきりフレイアが入れてくれたものかと…」
「ううん、兵長に言われたから……ってか兵長ってクレアの使ってる香油まで把握してるなんて…もしかして兵長クレアに気があるんじゃない?」
なんだかフレイアの口元がニヤニヤしている。
「ち、違うよ!!そんなことないって!わわ、私、今日はもう寝るね!」
クレアは布団をかぶって丸まってしまった。