第63章 敗北ばかりの調査兵団
「お前が引き金をすぐに引けたのは、仲間が殺されそうになっていたからだ。お前は聡い。あの状況じゃ半端な事はできないとよく分かっていた。あそこで物資や馬…仲間を失えば…その先に希望は無いのだと理解していた。アルミン、お前が手を汚してくれたおかげで俺達は助かった。ありがとう。」
確かにこの作戦、クーデターの重要性は十分に理解している自負があったアルミン。
汚れてしまった自身を手を肯定するリヴァイの言葉で、何か納得できる物があったのだろう。
アルミンは手に持っていた野戦食を口元に持っていった。
「……リヴァイ兵長、俺は…あなたのやり方は間違ってると…思っていました。イヤ…そう思いたかった。自分が人に手を下すのが怖かったからです…間違っていたのは自分でした。次は必ず撃ちます。」
今自分がこうして生きて食事ができているのは、紛れもなくリヴァイ、クレア、ミカサ、そしてアルミンがその手を汚して守ってくれたおかげなのだ。
その事にようやく気づくと、ジャンは頑なに自身の正義を貫こうとしていた自分を盛大に殴ってやりたくなった。
「あぁ…お前がぬるかったせいで俺たちは危ない目に遭ったな。」
「…申し訳ありません。」
「ただし、それはあの時あの場所においての話。何が本当に正しいかなんて俺は言ってない。そんな事は分からないからな…お前は本当に間違っていたのか…?」
「……え?」
そう言ったリヴァイの目は、自身を否定するものではなかった。
それだけではない。
お前にはお前のやり方で成し得るものがあるのではないのか?
なんとなく、そんな事を言われている様な気がしたのだが、それは気のせいだろうか。
それと同時にジャンは霊柩馬車を尾行する準備をしていた路地裏で、クレアが話していた事を思い出した。
“兵長は仲間想いの優しい人よ”
明らかに大失態をした自分の行動を頭ごなしに否定しなかったリヴァイ。
クレアの言ったこの言葉が今なってやっと理解できた様な気がした。