第63章 敗北ばかりの調査兵団
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「…どうしたアルミン、こんな汚ぇ馬小屋じゃ飯なんぞは食えねぇか?」
すっかり日も暮れて辺りが真っ暗になると、リヴァイ班は早めの夕食をとっていた。
夕食とは言っても皆の手が持っているものは、美味くも不味くもない野戦食だ。
決して団欒などという雰囲気ではないが、アルミンの食が進まない姿を見てリヴァイは声をかけた。
「いえ…そんな事は…ねぇ、ジャン…」
「…何だ?」
「1つ分からない事があって、その…僕が銃を出そうとした時…正直間に合わないと思ったんだ。…ごめん、でも…相手の方は既にジャンに銃口を向けていたから…でもあの時、兵長の投げた瓶であの兵士は散弾を撃つ事ができなくて膝をついたんだ。でもなんで僕は…あんなに躊躇う事なく撃てたんだろうって…もがいてる隙にジャンが馬車から蹴落とす事もできたのに…」
「それは……」
「殺せるうちに殺さないと、ジャンを失うと思ったから…だろ?」
ジャンが答えに困っていると、斜め向かいに座っていたリヴァイが代わりに答えた。
「…………」
「…アルミン、すまねぇ…俺が撃たなきゃいけなかったのに……」
「そうだったんだ…僕が殺した人はきっと優しい人だったのかもしれない…持っていたのは散弾銃…狙いを定めなくても数撃てば誰かを殺す事だって可能だったのに…殺しておけるうちに殺した僕なんかよりずっと人間らしい人だったんだ……」
「アルミン…」
「僕はすぐに引き金を引けたのに…僕は…」
「アルミン!お前の手はもう汚れちまったんだ。以前のお前には戻れねぇよ。」
リヴァイの言葉で夜空の様に真っ暗になっていたアルミンの顔色が、更に黒く染まっていく。
「なぜそんな事を…!!」
「新しい自分を受け入れろ、もし今もお前の手が綺麗なまんまだったらなぁ、今ここにジャンはいないだろ…?」
ジャンだけではない。
あの時、あの兵士がよろけながらも両手の散弾銃をジャンとアルミンに向かって発砲していたら、2人の命に物資までも失い、仲間に残された道も“死”だっただろう。