第63章 敗北ばかりの調査兵団
「新型立体機動装置の話もナシだ。連中があんなもん作ってやがったとはな…」
「…………」
「とにかく記事の発行は中央憲兵の報告を受けるまで待ってくれ!」
そう言ってその場を後にしたナイルだったが、中央憲兵を“あの連中”呼ばわりした事で、憲兵と中央憲兵の組織系統が異なるものだと証明している様なものだが、この事は記事にしないのがこの都会での暗黙の了解らしい。
ナイルとロイはそこそこの間柄だ。
書くなと言えば書かないだろう。
「…………」
ナイルは支部に戻る馬車の中で考える。
新型立体機動装置…
散弾なんぞ巨人には無力だろうが、人を殺すならそれだ。
まさに調査兵団を殺すためだけにある兵器。
そして憲兵団側にもその存在が隠されていたという事は……
我々憲兵団はあの銃口が向けられる対象外…ではないという事だ…
しかしどちらも“憲兵”という肩書が入る。
表向きはひとくくりになっているが、ナイルから見れば師団長という地位をもってしても中央第一憲兵は介入する事のできない不可触の領域だ。
有事の際、一体自分はどんな行動を取るべきなのか…
頭を悩ませながらナイルは支部へと戻って行った。
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その夜……
命からがら逃げてきたリヴァイ一行は、なんとか人里離れた古い馬小屋までたどり着くことができた。
のだが……
「あぁ……うっ…!!ガハッ………」
「アルミン……」
突然外に飛び出して行ったアルミンを心配し追いかけてきたクレアは木の根本で嘔吐している姿が目に飛び込み慌てて側まで駆け寄った。
「だ、大丈夫…?!」
「あ…あぁ……クレア…さん…?す、すみません…僕は…その…」
アルミンの顔は蒼白している。
きっと、人を殺してしまった事への罪悪感で身体が拒否反応を起こしているのだろう。