第63章 敗北ばかりの調査兵団
一瞬の気の迷いで形勢逆転してしまったジャン。
相手はもう散弾銃の引き金を引くだけだ。
「ジャン!!!」
クレアも、ミカサも、リヴァイもこの距離では間に合わない。
誰もが最悪な展開を覚悟した時だった。
ーガシャァン!!ー
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
女兵士の頭部で細長い瓶が割れ、中に入っていた液体が顔全体にかかると、その女は顔を掻き毟りながら叫び声を上げる。
瓶を投げたのはリヴァイだった。
発砲の阻止成功を確認すると、リヴァイは再び襲いかかってくる兵士相手に飛び回る。
ーバンッ!!!ー
その隙をついてアルミンが小型の銃でその頭を撃ち抜くと、女兵士は馬車から落下し動かなくなった。
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リヴァイ達が逃走をすると、死んだ兵士達の周りには大勢の野次馬達でごった返していた。
その中心で頭を抱えていたのは、憲兵団のトップ、ナイル・ドークだ。
「酒場の客の話によると、その長身の男は自らを“憲兵様”と名乗ったそうです。そこから街全体に噂は広がり憲兵団が街中で調査兵団と争った事が明るみになっています。」
「………」
「話は明日にでも壁全土に知れ渡るでしょうが…ドーク師団長ご安心を。我が社の記事の方がそれよりはやい。」
「ダメだ…まだ待ってくれ!我々もまだ何が起きたのか把握できていない。」
記事の発行を待てと言ったナイルに、若い記者が鋭い質問を投げかける。
「…つまり、中央憲兵がやったという事ですか?」
「オ、オイ…!」
「通常の憲兵団とは組織系統がまるごと違うといった話は本当だったんですね!!」
「おい!ピュレ!!」
「あっ!!」
熱心にメモを取る若手の記者の手帳をその上司が取り上げてしまった。
「すみませんドークさん、中央憲兵に関わることは一切記述しませんので。こいつはまだ新人でしてね。この壁の理をわかっとらんのですよ。」
「助かるよロイ…」
ナイルと、このロイと呼ばれた年配の記者は顔見知りのようだ。