第63章 敗北ばかりの調査兵団
「…………数が…多すぎる!!」
圧倒的に敵の数が多すぎる。
しかも散弾銃を撃ってくるという危険な武器も装備にしている。
クレアはこの狭い路地と、自身の身軽な身体を活かして、相手が狙いを定める前にその懐に飛び込み、思い切りブレードをふるった。
「グァァァァァ!!」
断末魔の様な叫び声を上げ落下していく兵士。
クレアの顔には吹き出したばかりの生温かい血液がバシャリとかかる。
「……うぅ…!!」
人間を殺すのは初めてだった。
壁外の巨人を討伐する時には何も感じなかった。
だが、同じブレードを使っても、人間の肉を、骨を切り裂く感覚は自然と吐き気が込み上げるような不快な感覚だった。
でも、ここで仲間を失うわけにはいかない。
ミカサだってリヴァイの命令を聞き、ひたすらに戦っている。
弱気な事を考えている暇などない。
だがそんな時……
「ッ!!クソッ!!回り込まれる!!」
リヴァイの声を聞くと、1人の女兵士がアルミンに銃口をむけた。
「アルミン!!!」
間一髪ミカサが蹴り落とすが、運悪く荷台の上に落下してしまった。
助けに行きたいが、ミカサも他の兵士から攻撃を仕掛けられ、馬車には戻れない。
「ジャン!!撃って!!!」
相手はまだ銃を持っている。
よろけている間に始末しないと危険だ。
「動くな!!!」
「ジャン!?」
しかし、ジャンは銃で脅すだけでその引き金を引くことはしなかった。
アルミンが撃つようにうながしてもその指は動かない。
ジャンは人を殺すために調査兵団に入ったのではないと言っていた。
良くも悪くも正義感や責任感の強いジャンは、どうしても人を殺す覚悟が固まらなかった様だ。
「動くなっつてんだろ!!」
しかし、そんなジャンの迷いを突いて、女兵士はよろけながらもジャンの手を振り払い持っていた銃を放り出してしまった。