第63章 敗北ばかりの調査兵団
「俺らはゴミ溜めの中で生きるしかなかった…その日を生きるのに精一杯でよ。世界はどうやら広いらしいって事を知った日は…そりゃ深く傷ついたもんだ。ちんけな自分とそのちんけな人生には何の意味もねえって事を知っちまった…だが、救いはあったんたぜ。」
「………救い…?」
裏返した酒瓶に、ケニーの姿がはっきり映っているのが確認できる。イスを抱えているようだがまた投げつけるのだろうか。
「あぁ、やりたい事が見つかったんだ。単純だろ?単純だが実際人生を豊かにしてくれるのは“趣味”だな。」
「……趣味か、俺の部下の頭をふっ飛ばしたのもあんたの趣味か?」
「あぁ…大いなる目標のためなら殺しまくりだ。」
ケニーの正確な位置を掴むと、リヴァイは酒瓶に映った姿を頼りにカウンターに銃を逆さに置いた。
「お前だっててめぇのために殺すだろ?」
「あぁ…そうだな……」
狙いが定まると、リヴァイは迷うことなく引き金を引く。
ドンッ!!!
「な、なんだ?」
「アッカーマン隊長が…撃たれた?」
店内に銃声が響き、ケニーは店外に吹き飛ばされたが、おそらく死んではいないだろう。
「助かったよじいさん…!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
ケニーは袋のネズミと言っていた。
外はあの散弾銃を構えた輩で四方八方塞がれてると思った方がいいだろう。
リヴァイは今にも腰が抜けそうな酒場の店主に銃を返すと、イスを2脚囮にして窓へ投げつけた。
「出てきたぞ!!」
リヴァイの思惑通りイスに向かって散弾銃を撃ち込んでる隙をついて正面から脱出を試みたが、やはり人数が多すぎた。
1人の兵士がリヴァイの存在に気づく。
「……チッ……」
相手は本気で殺しにきている。
もう下手な手加減をしていたら殺されるのはこっちだ。
リヴァイは心の中で覚悟を決めると、散弾銃の引き金が引かれる前に、こちらを睨んだ兵士の喉元めがけてアンカーを射出した。