第63章 敗北ばかりの調査兵団
「どうもこの店から…薄汚ぇネズミの匂いがするな。どチビのネズミのよぉ…みーつけたー!!憲兵様が悪党を殺しに来たぜ!!バン!バン!!」
「ひぃっ!!!」
間髪入れずに派手に入店してきたケニーに、店主も客もあいた口が塞がらない。
「なんだ?いねぇのか?」
「ここだケニー、久しぶりだな。」
「おう、懐かしいな。ちょっと面見せろよ。」
「ふざけんじゃねぇ、てめぇさっきから俺の顔に散弾ぶっ放して来てんじゃねぇか。」
「まぁな、今日はお前の脳みその色を見に来たんだ。」
「あ…あの……」
とてもシラフの状態でしている会話とは思えない。
店主はわけがわからず説明を乞おうとするが、2人の耳には入らなかった様だ。
「まだ生きてるとは思わなかったぜ…ケニー。憲兵を殺しまくったあんたが憲兵やってんのか?ハッ……あんたの冗談で笑ったのは正直これが初めてだ。」
「ガキには大人の事情なんてわかんねぇもんさ、おっとすまねぇ。お前はチビなだけで歳はそれなりに取ってたな。」
チビだチビだと耳障りな事を言ってくるあたりは昔となんら変わりはない。
色々聞きたい事だらけだが思い出話に花を咲かせられる状況ではないのは確かだ。
リヴァイはカウンターの裏側に隠してあった店の護身用の銃を見つけると、なんとかこの状況を打破できそうな方法が閃く。
その銃を手に取ると、カタカタと震えている店主に向かって人差し指を立て黙らせた。
「お前の活躍を楽しみにしてたよ、俺が教えた処世術がこんな形で役立つとはな。しかし…俺ならこんな酒場に逃げ込むマネはしねぇ。袋のネズミって言葉を俺は教えてなかったか?これじゃあお前がどこから逃げようと上からズドンだぜ?」
「…………」
なかなか出てこないリヴァイに少し苛立ったのか、ケニーはカウンターに並んでいる酒瓶めがけてイスを投げつけた。
「なぁ…リヴァイ。どうしてお前が調査兵になったか、俺にはわかる気がするよ。」
イスが飛んできた方向からケニーの位置を推測すると、隙をついてリヴァイは棚に乗っている瓶を1本くるりと回した。